[大阪 9日 ロイター] 電子部品各社の業績は2013年3月期以降、増収増益に向かうとの見方が優勢となっている。タイ洪水で停滞した部品需要が来期に回復するほかスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)、タブレットPCも堅調に市場が拡大するとみられているためだ。

トムソン・ロイター・エスティメーツにおける現時点の主要アナリストの予測によれば主要8社の来期業績は5─15%の増収、軒並み2ケタ以上の営業増益になる見通し。ただ、震災の影響が薄い11年3月期の水準まで営業利益が回復すると見込まれているのは日本電産6594.OSのみで、V字回復には自動車・産業用向けへの部品拡販や、一段の合理化などの取り組みが必要となりそうだ。

9日までに出そろった主要8社の第3・四半期決算は、日本電産6594.OSを除く7社が減収、全社が営業減益となった。通期営業利益予想を下方修正したのは6社。自動車排気系部品が堅調なイビデン(4062.T)と、タイ洪水で中間期に通期業績予想を大幅下方修正したローム6963.OSは据え置いた。

部品各社は従来、震災の影響で上期に生産が減少した分を下期に挽回できると予想していたが、欧州の金融不安や中国などの景気の減速で年末商戦向けの部品需要が想定を下回ったことが響いた。円高やタイ洪水に伴うサプライチェーンの影響もマイナスだった。ただ、状況は徐々に改善方向にあり、「5─6月にはほとんど(セット・部品メーカーとも生産は)回復してくるのではないか」(京セラ(6971.T)の久芳徹夫社長)との見方が大勢を占める。

<部品需要は春以降に本格回復へ>

第3・四半期の決算会見では「(中華圏での)旧正月明け以降、セット生産の回復に合わせ、春先に向けて受注は上向いていく」(村田製作所6981.OSの藤田能孝副社長)など、1月を底に需要が回復基調に転じると予測する声が相次いだ。

事実、タイ洪水の影響は徐々に薄れつつある。グループでタイ国内に持つ10工場のうち、8工場が洪水で一時操業停止した日本電産は、世界シェア(台数ベース)9割とされるハードディスクドライブ(HDD)用モーターについて、12年1─3月の出荷台数が1億3500万台、4─6月には1億6500万台と拡大し、13年3月期では今期予想比33.9%増の6億8000万台に急拡大すると予測する。

村田製作所もスマホの普及などを追い風に、需要回復を見込む。11年10─12月に92%だった操業度は、12年1─3月には需要の閑散期となるため88%に低下。ただし3月単月では9割程度となり、4月以降は「90─95%ぐらい」(藤田副社長)で推移する見通し。

同社は13年3月期の市場予測として、携帯電話市場(台数ベース)が12年3月期見通し比で5─10%、パソコン市場が同10─15%、テレビ市場が同5─10%、それぞれ増加すると見込む。中でもスマートフォンは同35%増と予測。スマートフォンは、同社の積層セラミックコンデンサーの1台あたりの搭載点数が従来の携帯電話に比べ多く、市場の拡大は同社の収益をけん引すると見込まれる。

<自動車向けは堅調、収益を下支え>

今期はデジタル家電などの年末商戦が期待外れとなった一方、自動車分野が収益の下支えとなったところもある。イビデンは自動車の排ガス浄化に用いるDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)が欧州メーカー向けに堅調に推移。業績予想を据え置いた。

アルプス電気(6770.T)の車載部品関連部門は、タイ洪水で部材調達面での影響が一部あった半面、販売は概ね増加基調で推移。AUTO事業本部の通期売上高予想を昨年10月末時点の公表値から74億円積み増し前年比7.8%増の1347億円に上方修正した。

<11年3月期水準への回復スピードに差も>

もっとも、来期の営業利益における市場予測で11年3月期実績を上回ると見込まれるのは日本電産のみ。売上高でも来期は3社が11年3月期の水準に届かないとの市場予想となっている。デジタル機器分野では、セットメーカーからの値下げ要請が年々厳しくなる中、自動車、産業分野への進出度合いにより、収益回復スピードに差が出る状況も生じている。

大和証券キャピタル・マーケッツの佐渡拓実シニアアナリストは、自動車や米アップルAPPL.O向けに部品を供給している企業は来期のみならず今期の業績見通しも堅調だとする一方で、セットメーカーが巨大化していることが来期のリスクの一つと指摘。生産量は確保できたとしても、値下げ圧力が想定以上のものになるなど「納入先の調達方針が部品各社の利益の引き下げ要因になるリスクはある」と指摘する。

為替動向やマクロ経済の不透明感も懸念材料として残る。電子部品各社にとって来期は震災、タイ洪水による今期の落ち込みからどこまでリカバーできるか、危機をチャンスにする手腕が求められる1年になりそうだ。

(ロイターニュース 長田善行;編集 宮崎大)