[東京 10日 ロイター] - 海外子会社の損失を巡る東芝と監査法人PwCあらたとの対立は、あらた側が決算は「限定付き適正」、内部統制は「不適正」との判定を下し、一応の決着をみた。東芝にとっては上場廃止回避への前進だが、「適正」と「不適正」を併記した異例の監査結果を「玉虫色」(大手行幹部)と冷ややかに受け止める見方もある。上場維持の鍵となる半導体売却交渉が膠着する中、同社の経営の先行きにはなお曲折の懸念が消えていない。

あらた監査法人は東芝の2017年3月期の有価証券報告書の財務諸表について、おおむね適正であるとする「限定付適正意見」を表明した。一方、内部統制については東芝の米子会社だったウエスチングハウス(WH)が2015年末に買収した米原子力サービス会社CB&Iストーン・アンド・ウェブスターに関し、「工事損失引当金の認識時期の妥当性を検証する内部統制が適切に運用されていない」として「不適正」の判断を示した。

これに受けて、東芝の綱川智社長は10日の会見で、同社決算の「正常化」を強調。内部統制については、WHが米連邦破産法11条の適用を申請し、東芝の連結から外れたことを理由に「不備の可能性はなくなった」と強調した。

<「絶妙の落としどころ」>

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上場企業が作成した内部統制報告書に監査法人の不適正意見がつくのは「きわめてまれなケース」(金融庁幹部)だ。過去5年で不適正意見がついた例はない。

「監査法人が公式に不備を指摘した意味は小さくない」と日本取引所グループ(JPX)の関係者はあらたの判断を評価する。

東芝は、2015年に表面化した不正会計問題により特設注意市場銘柄に指定された。同社は16年9月に東証などに管理体制の報告書を提出、指定解除を求めたが却下され、現在は今年3月に提出した2度目の報告書が審査されている。東証と名証は3月15日付で東芝を上場廃止基準に抵触する可能性のある監理銘柄(審査中)に指定した。

審査を担当するJPX傘下の自主規制法人は、今秋以降、結論を出す見通しだが、あらたによる内部統制への不適正意見が、その判断に「ネガティブな影響を与えかねない」と予想する見方もある。

一方、取引銀行には、東芝決算に「限定付き適正」の意見表明がなされたことについて、安心感も出ている。大手行のある幹部は「すぐに取引解消という事態は避けられる」と指摘する。

また、別の取引銀行の幹部は、東芝とあらたがそれぞれのメンツを立てながら上場廃止の回避に動いたと分析、財務と内部統制に別々の意見を示した監査結果を「絶妙な落としどころ」と表現した。

<難題の債務超過、上場廃止のリスク>

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「第1のハードルは超えた。特注指定の審査で東証は上場廃止にはしないだろう」。東芝問題を注視しているミョウジョウ・アセット・マネジメントCEOの菊池真氏は今回の監査結果を前進として評価する。その一方、「債務超過が解消できておらず、上場廃止のリスクは残っている」と指摘する。

東芝にとって、半導体メモリ―事業の売却問題を早期に決着させ、5500億円を超す現在の債務超過を18年3月までに解消しなければ、上場廃止ばかりか経営破綻に追い込まれる懸念も否定できない。

綱川社長は同日の会見で、売却先として政府系ファンドの産業革新機構や日本政策投資銀行が主導する日米韓連合のほか、合弁パートナーであるウエスタン・デジタル(WD)(WDC.O)、台湾の鴻海グループが候補になっていることを確認した。しかし、交渉の進展には「WDとの訴訟が大きく影響している」と指摘、見通しについては「最善を尽くす」とのコメントを繰り返すにとどまった。

(和田崇彦 取材協力:布施太郎、浜田健太郎、長田善行 編集:北松克朗)