Gina Chon

[ワシントン 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領が発表した2018会計年度の予算案概要は、リスク管理の悪しき見本だ。既に潤沢な国防費を一層膨らますため、ヘルスケアの研究や職業訓練、水質浄化などの予算を削る方針だが、こうした提案はあまりにも多くの経済的脅威を過小評価している。

総額1兆1000億ドルの裁量的経費を対象とした今回の予算案概要は、トランプ氏が選挙中に表明した公約に沿ってまとめられた。国防総省と国土安全保障省の予算はそれぞれ10%と7%増額され、この中にはメキシコ国境の壁建設費用が含まれる。その他の連邦省庁予算は何十年ぶりかの大規模な削減に見舞われる。

環境保護局(EPA)の予算は31%、人員は20%カットされ、五大湖浄化の取り組みなど50を超えるプログラムが消滅する。各州向けに水道インフラ拡充予算が若干上乗せされるとはいえ、農務省の扱いで地方にとって有益だった5億ドルの水資源管理プログラムも撤廃される。2016年のハーバード大学による調査では、33州で飲料水に含まれる毒性化学物質濃度が危険レベルにあることが分かっている。

トランプ氏は厚生省の予算も20%近く減らす意向だ。対象にはエボラ出血熱などのウィルスに関する国際的な調査研究を援助する機関も入っている。エボラ出血熱は2014年に米国で初めて症例が確認され、最終的には患者として十数人、うち死者は2人と報告されたほか、数百人が監視を受ける事態になった。こうした感染拡大を予防し、抑え込むためには財政支出が欠かせない。

またトランプ氏はあらゆる表現で雇用創出を訴えていながら、提案した労働省予算の20%削減によって、年齢が高く所得が低い人々や社会的に不利な立場にある若者などに新しい技術を習得させるための訓練プログラムや施設が影響を受けてしまう。予算案概要では、州による職業研修プログラムの拡充支援についてはあいまいな言い方にとどまっている。

ホワイトハウスの予算案提示は単なる出発点にすぎない。最終的には予算を決めるのは議会であり、共和・民主両党のメンバーは既に政権の提案への異論を唱えている。そうだとしても米国がどんな問題を抱え、何が必要かを判断するという面で、トランプ氏の優先順位の付け方はあまりにも目先しか見ていないことが分かる。6件の破産に関わった人物である以上、当然なのかもしれない。しかし、米国には長期的な投資を見送る余裕はほとんどない。

トランプ政権初の予算案概要が16日、明らかになった。海外援助や環境対策の予算を大幅に削減する一方、国防費を増額する内容となっている。これに対し、身内の共和党からも反発の声が上がっている。

●背景となるニュース

*ホワイトハウスは16日、2018会計年度の予算案概要を発表した。多くの省庁で予算が大幅に削減され、各種プログラムや連邦機関廃止も含まれる。

*EPA予算は31%減と最大の落ち込みに直面。約3200人の人員削減も求められる。国務省予算はおよそ29%減、農務省と労働省はそれぞれ21%減が提案された。

*国防総省の予算は10%増、国土安全保障省は7%増。

*トランプ氏は「勇気あるわが国の軍人たちが戦争抑止に必要な手段を保有し、いざ戦いを求められた際には勝利のみを達成できる態勢を確保しなければならない」と語り、今回の提案を「米国第一主義の予算」と表現した。

*さらに同氏は「このような危険な時代において、公共の安全と国家安全保障に重点を置いた予算の青写真は、世界に対して米国の強さと守りの堅さ、決意を示すメッセージになる」と強調した。

*1兆1000億ドル規模の予算案概要の対象は裁量的経費のみ。義務的経費を含む予算案は、5月に公表される。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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