[東京 17日] - 米連邦公開市場委員会(FOMC)は15日、2015年12月に始まった今回の利上げサイクルで3度目の政策金利引き上げを行った。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は25ベーシスポイント(bp)引き上げられて、0.75―1.00%のレンジとなる。

3月FOMCは声明だけでなく、経済見通し(SEP:Summary of Economic Projections)公表、イエレン連邦準備理事会(FRB)議長会見を伴う会合であり、それぞれに多くの情報が含まれていた。随所で、金融政策が米国に良好な経済状態をもたらしている「自信」を感じさせるものとなった。

以下、米金融政策の行方を読み解く上で重要なポイントを押さえておこう。

<年内3回以上の利上げを暗示>

まずFOMC声明は、強気トーンへの変化の羅列だった。景気判断の部分では、設備投資の見方について、前回の「軟調」から、今回は「しっかりしてきた」に文言が変化した。昨年前半に米景気拡大は減速したが、その調整をもたらしたのが設備投資の落ち込みだった。そこから立ち直ったという宣言だ。

インフレについては、上下方向へのぶれを含む「対称的な物価目標」に言及した。これは、インフレ率が目標の2%を突き抜ける事態が起きたときにも、無用の混乱を避ける配慮だろう。

つまり、「2%の物価安定目標=インフレ率の天井が2%」ではないということだ、この点は記者会見でも丁寧に説明された。実際、FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数は1月には前年同月比1.9%に上昇している。2%超えも想定しなければならない水準にある。

金融政策の進め方についても、前回のFOMCまでは「経済状況はFF金利の緩やかな引き上げしか正当化しない形で進むと予測する」と言っていたが、今回はこの「しか(Only)」の部分が削除された。利上げの進め方の選択余地を広げたと言えよう。

一方、経済見通し(SEP)は、数字に変更をほとんど加えなかったが、変えなかった意味は大きい。まず失業率で見ると、現在のほぼ完全雇用状態が2019年まで続くとしている。インフレ率も目標の2%近辺で2019年まで推移。経済成長率見通しも2018年について前回12月時点の2.0%から2.1%へわずかに引き上げただけで、他は修正なしだ。

つまり、トランプ新政権による景気刺激策を明示的に織り込んでいないことを意味する。逆に言えば、織り込まれた際の上ぶれリスクを見込まなくてはならないということである。

この点、参考にすべきはSEPに含まれているドットチャート(FOMCメンバーのFF金利見通し)だ。2017年末の予想中央値が前回12月と変わらなかったため、ハト派的と解釈されたが、実は予想値の加重平均をとると1.40%であり、前回1.37%より上向いた。年内3回以上の利上げが必要になるかもしれないと暗示している。

<侮れない「経済大統領」の功績>

では、イエレン議長の記者会見では、何が語られたのか。印象に残ったのは、冒頭発言で、利上げを長く待つと不都合が生じるという「ビハインド・ザ・カーブ(金融政策が後手に回る)」問題に言及があったことだ。利上げを見送ってしまう時間が長すぎると、その後の利上げを急ぐことになり、それは市場の動揺を引き起こし、経済を景気後退に陥れるという警告を今回も行なった。

ただ、利上げ継続の意向を伝える一方で、2019年でもFF金利の中立水準は3.0%で良いとしている。すなわち、ブレーキをかける金融引き締めには消極的であることが説明された。

中でも注目点は、今回の利上げで消費者に伝えたいことは何かという質問に対し、イエレン議長は良い質問をしてくれたと記者に謝意を示し、「シンプルなメッセージは米国の経済状況が良好であることだ」と答えたことだろう。

インフレ率が2%目標に向けて上昇していることだけでなく、雇用についても、他の転職機会を見込んで離職しやすい環境になっているとし、「経済の力強さとショックに対する回復力に自信を持っている」とはっきり語った。

ちなみに、FRB議長は事実上、経済運営の最高責任者であり、ときに「経済大統領」と言われる。実際、トランプ新政権の経済政策について問われた際には、「成長加速を目指す政策を導入するのならば、生産性を上げ、経済成長の潜在力を高めるという私が議会や政権に促してきた政策が、我々の見たい非常に歓迎すべき変化だ」と述べるなど、まさにその名に恥じない受け答えだった。

2018年の成長見通しをわずか0.1%ポイントしか引き上げなかったことも、生産性を高める財政発動は歓迎だが、単に景気刺激だけの財政発動は不要もしくは有害だというメッセージだろう。

完全雇用の継続とインフレ目標近辺という理想的な経済状態をもたらす実績を誇るイエレン議長の会見は、まさに「経済大統領」の所信表明とでも呼べるものではなかっただろうか。

*鈴木敏之氏は、三菱東京UFJ銀行市場企画部グローバルマーケットリサーチのシニアマーケットエコノミスト。1979年、三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。バブル崩壊前夜より市場・経済分析に従事。英米駐在通算13年を経て、2012年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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