[東京 11日] - 東証株価指数(TOPIX)が昨年末以降の保ち合い下限を割り込み、不透明感が高まっている。米国の財政金融政策を覆う不透明性に加えて、シリアや北朝鮮情勢を巡る地政学リスクが高まっていることなどを背景に、様子見姿勢が強い。

また、すでに業績上方修正というかたちで事実上の業績発表を終えた銘柄が買われる傾向がある。すなわち、決算発表に対する警戒感も感じられる。特に、アナリストが事前に業績動向をヒアリングするプレビュー取材が禁止になったことから、実際の業績発表がサプライズとなることを恐れ、機関投資家は様子見の継続が懸念される。

ただし、プレビュー取材が事実上行われなくなった昨年4月から見ると、日経平均株価の買い場は4月8日、7月8日、10月14日、今年の1月18日と、決算発表直前の時期に押し目が集中している。現在も様子見ムードが支配的であるが、そろそろ買い場を迎えつつあると言えるだろう。この1年間以外でも、混乱した株式相場は決算発表時期に落ち着くことが多いと感じる。

すでに発表済みの決算期に関しては、当社が継続的に調査している200社ベースで見ると、第1―第3四半期の経常利益額は会社予想の83%まで進捗(しんちょく)している。よって、最終的な通期の業績は、会社予想に対して上方に着地する公算だ。さらに、1―3月期のドル円相場はその前の四半期に比べても円安推移なので、アナリストの予想を上回ることも十分あり得るだろう。

テクニカル指標で見ても、東証一部の騰落レシオ(25日)は4月18日頃までに底入れの可能性が高い。下げ止まりの時期が視野に入ってきた。

<業績ガイダンスも強い可能性あり>

本決算の会社発表では、新たな決算期に関する業績ガイダンスにも注目が集まる。こちらは会社次第であり、一般に予測が立ちにくいとされる。確かに、過去には保守的過ぎる業績ガイダンスが投資家の失望を招くケースも散見された。企業側としても期中の業績下方修正は避けたいので、事前に不確実性を考慮した保守的ガイダンスを出すことには致し方ない面がある。

しかし、今回、企業の設備投資意欲が強いことは、業績ガイダンスのヒントになる。鉱工業生産統計の関連統計である製造工業生産予測調査(製造工業生産予測指数、4月)を見ると、はん用・生産用・業務用機械工業が前月比16.3%もの増産の見込みであり、財別には資本財(除く輸送機械)が前月比24.4%もの増産の見込みだ。日銀短観では大企業・製造業の設備投資計画がプラス5.3%で、この時期としてはリーマン・ショック以降では最も強い数字だ。

生産設備の装置が早々にも増産される見込みであることは、すでに装置などの発注がなされている証だろう。こうした設備投資計画には、必ず事業計画や資金計画などが存在する。資金手当て、設備投資、生産、販売、収益、資金回収などの一連の計画があるならば、業績ガイダンスは明確な数字になりやすい。おのずと過剰にコンサバティブ(保守的)な見通しになることはないだろう。

実際、コンサバティブの度合いを測るために、日銀短観による経常利益額に関し、最終実績に対して前年3月調査時点の見込みがどうであったかを調べた。すると、3月時点の設備投資計画が積極的だと利益見込み額のコンサバティブな度合いが小さく、現実的な見込みとなる傾向がはっきりしている。今回の業績ガイダンスが保守的過ぎて失望売りを招く懸念は、全般的には小さいだろう。

なお、研究開発と設備投資を混同してはいけない。例えば、トヨタ自動車(7203.T)を筆頭に、自動運転分野を中心に研究開発額が大きい自動車産業は、既存の内燃機関中心の工場を増強する必要性は感じていまい。

<設備投資意欲が強い半導体関連に期待>

さて、冒頭で紹介した毎四半期の最初の月に見られる株価のリバウンドは月内に一巡することが多い。そこで物色戦略が重要となる。この時期はこれまで紹介したように設備投資に積極的な企業を中心に、保守的ガイダンスリスクを回避する戦略が有効となる。

設備投資が旺盛な財として、半導体製造装置があげられる。3カ月平均で公表される日本の半導体製造装置受注額は、2月段階で1860億円と、3カ月前の1459億円や1年前の1262億円に比べて大幅に増加している。鉱工業生産統計の資本財生産の先行き好調なデータとも整合的だ。半導体製造装置メーカーの業績にも期待できるし、半導体を製造する企業のガイダンスにも期待できる。

なお、米国では同様の業界集計統計の公表が、2017年1月の発表を最後に取りやめとなった。一部の半導体製造装置メーカーがデータの提出を拒んだためとされる。なぜデータを提出しなかったかは定かではないが、出荷しきれないほどの受注を抱えた装置メーカーならば、その事実を他の出荷余力が残る競合相手に知られると、注文を横取りするような営業強化をされる恐れが出てくる。つまり、受注/出荷比率(B/Bレシオ)がかなり上昇したような、凄い状況になっている可能性があると推測する。

実は、半導体チップ(上記は半導体製造装置の話)に関するB/Bレシオが、20年前の1997年1月発表を最後に米国で公表されなくなった。この前後は、1995年から2000年にかけてIT関連株が集中的に物色された時期だった。今回も同様の展開が期待できるのだろうか。少なくとも、今年1―3月期の受注動向が4月の業績開示では明らかになる。今回の業績開示は米国の半導体関連株の好調さを改めて確認することになるのではないか。

<「テスラ・チェーン銘柄」にも注目>

また、設備投資が旺盛で増産に意欲を示している他のグループとしては、米テスラ(TSLA.O)関連の電池部材メーカーにも注目できる。米ネバダ州でテスラとパナソニック(6752.T)が運営する工場・ギガファクトリーが部分的に稼働し始めた。ギガファクトリーはリチウムイオン電池の工場で、全面稼働となれば現在の世界生産量と同程度を一工場で生産可能とされる。世界中のあらゆる工場の中で最大となる予定と自負するほどの大規模な施設だ。

実際、テスラ向けのサプライチェーンを構成していると見られる電池部材メーカーの増産計画は、軒並み数倍規模と突出して積極的だ。例えば、住友化学(4005.T)は絶縁体となるセパレーターの生産能力を4倍に拡大、住友金属鉱山(5713.T)は正極材の生産能力を2倍に拡大、日立化成(4217.T)は負極材を2017年中に倍増、5年間で4倍増に拡大すると報じられた。

なお、3月末にはソルアクティブ・グローバル・リチウム株指数(SOLLIT)が急騰し、4月に入ってテスラ株もここ2年強の保ち合いの上限を突破した。前出のテスラ関連株は、テスラ株の上昇に単純に追随する可能性もあるし、決算発表時の業績見通しも過剰にコンサバティブになることもないだろう。「テスラ・チェーン銘柄」に期待したい。

その他にも、3月調査日銀短観で設備投資計画が強い主な業種は、非鉄金属、石油・石炭製品、その他製造業、繊維、窯業・土石製品、生産用機械、金属製品、素材業種、宿泊・飲食サービス、電気機械などだ。こうしたセクターの企業による業績ガイダンスは、総じてしっかりしたものになりやすいだろう。

*木野内栄治氏は、大和証券投資戦略部のチーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト。1988年に大和証券に入社。大和総研などを経て現職。各種アナリストランキングにおいて、2004年から11年連続となる直近まで、市場分析部門などで第1位を獲得。平成24年度高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。現在、景気循環学会の理事も務める。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。