Tom Buerkle

[ニューヨーク 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ラリー・フィンク氏が率いる米資産運用大手ブラックロック(BLK.N)は、パッシブ運用を巡る業界の主導権争いに新しい局面をもたらしつつある。ブラックロックは、自社算出の指数に連動する上場投資信託(ETF)を投入し、手数料引き下げに動いた。

これはブラックロックが株式の分野で同業者を制圧した「勝利の方程式」だ。資産運用業界は成長余力が乏しいだけに、こうした同社の攻勢に伴う競争からの脱落者はどんどん増えていくかもしれない。

ETFは低コストで流動性が潤沢というその特徴から、個人投資家からヘッジファンドに至るまで幅広い人気を得ている。ただそのほとんどは株式が対象で3兆ドルに上る米ETF資産の80%を占めており、債券の割合は18%未満にとどまる。

理由は構造的なものだ。ETFは、S&P総合500種のような代表的な指数から、特定のセクターをカバーする商品まであらゆる存在の動きを追っている。

対照的に債券市場は極めて細分化されている。アップル(AAPL.O)やゼネラル・エレクトリック(GE)(GE.N)のような企業は十数本もの社債を発行しているが、通常普通株は1種類しかない。債券指数を見ると、比較的広範にフォローされているものがいくつかあり、例えば「バークレイズ・キャピタルUSアグリゲート」などが挙げられる。ブラックロック傘下のiシェアーズは、最大の債券ETFをこの指数と連動させている。

こうした中でブラックロックは、自社算出の指数に連動する新たな債券ETFを立ち上げる。

1つは平均より利回りが高い投資適格債を、別の1つはデフォルト(債務不履行)リスクが低い高利回り債を、それぞれ対象とする。これらの商品が、かつてブラックロックが株式投資で起こしたような地殻変動を債券投資で再現してくれると期待しているわけだ。

またさらなる手を打ち、住宅ローン担保証券(MBS)に投資する既存のETFの手数料も7割弱引き下げ、米連邦準備理事会(FRB)が年内に保有債券の縮小を開始した局面で有利な立場を築くことを狙っている。

世界最大の運用会社であるブラックロックがもたらした新機軸は、同業者たちにとっては凶報が加わったという意味しかない。

ボストン・コンサルティング・グループによると、米国では昨年の預かり資産額は6%増の33兆ドルとなった。だがこれはすべて資産価格上昇が原因であり、差し引きの資金流入はややマイナスだった。業界として成長性に欠けていることや、パッシブ運用分野での競争のために、業界の収入に対する利益率は過去10年で25%近く縮小した。

投資家のパッシブ運用志向の高まりで最も痛手を受けているフィデリティ・インベストメンツは今週、数百人の従業員を解雇する方針を表明した。パッシブ運用の流行が一服するまでには、これからより多くの「犠牲者」が生まれるだろう。

●背景となるニュース

・ブラックロックは13日、新たに4本の債券ETFを立ち上げるとともに、別のETFの手数料を引き下げ、投資家にアピールする方針を示した。

・ブラックロック傘下のiシェアーズによると、4本のうち2本は自社算出指数に連動する。これまでのETFはすべて第三者が算出した指数と連動していた。

・ブラックロックは、MBSに連動する「iシェアーズMBS ETF」について1万ドル当たり年27ドルから9ドルに手数料を引き下げる。

・iシェアーズの米国責任者マーティン・スモール氏はロイターに「われわれはあらゆる証券市場を網羅するという強い意欲を持っている」と語った。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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