Daniel R. DePetris

[9日 ロイター] - 米国の国家安全保障会議(NSC)は現在、対処すべき数多くの危機に直面している。朝鮮半島での核・ミサイル拡散や、西側諸国で起きている過激派組織「イスラム国」に触発された攻撃、南米ベネズエラの政治・経済的危機、ロシアによるウクライナ、ジョージア、シリアへの軍事介入など枚挙にいとまがない。

NSCは、このような非常に危険かつ刻一刻と状況が変化する問題の全てにおいて、省庁を超えて国家安全保障の専門家が協議し、大統領に進言する場となっている。

NSCメンバーは慢性的な睡眠不足のなか、米外交政策を管理し、手に負えない状況に直ちに陥りかねない危機を封じ込めなくてはならない。オバマ前政権のNSCでシニアディレクターを務めたローレン・デジョンゲ・シュルマン氏は、NSCについて「実存上の恐怖と物理的な欠乏、そして力業が混ざり合う」場所だと表現した。

最も理想的な状況であったとしても、ホワイトハウスのNSCメンバーであることは大変な仕事である。だが、もし彼らが裏切りを恐れたり、生産的な仕事関係を互いに築けない場合、環境は耐えられないものとなる。ロバート・ゲイツ、レオン・パネッタの両元国防長官は、それぞれの回顧録の中で、米国家安全保障に関わる省庁間の調整が、性格の違いや私欲のせいで、いかに遅れ、あるいは滞るかについて不満を述べている。

だからこそ、トランプ政権内の人事異動や辞任、NSC幹部とホワイトハウス当局者との間で繰り広げられているメディアを使った腹いせが非常に心配なのだ。もし野放し状態が続くのであれば、より多くの政策の選択肢を大統領に与える健全な競争や個人のライバル関係は不信を生みかねず、ワークフローと調整を遅らせる可能性がある。NSCは、悪化して大統領の職務に悪影響を及ぼす前に、この問題をつぼみのうちに摘んでおかなければならない。

NSCの活動はこの数週間、あまりに目まぐるしい忙しさであったため、誰が大統領の信頼をつなぎとめ、誰がお気に入りではなくなりつつあるかをチェックするのが難しくなっている。

大統領に適切なブリーフが行われていることを監督する立場にあり、そのヒエラルキーのトップにいるマクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題)は、自身の権威を脅かしたか、メディアにリークした疑いのある職員数人を排除した。

NSCで中東担当トップだったデレク・ハーベイ氏は7月終わりにNSCから外されたが、政府内の別のポジションで復帰している。NSCで戦略的計画策定の責任者だったリッチ・ヒギンス氏は、トランプ大統領のアジェンダを台無しにしようとしたとみられる官僚について書かれたメモを流し、追い出された。

また、ひどく経験不足なうえ、マイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)に近すぎる人物と情報機関関係者から見られていたNSC情報活動シニアディレクターのエズラ・コーエン・ワトニック氏も、もはやホワイトハウスで働いてはいない。人事刷新は明らかに、プロセスを効率化し、自身の権力に対する脅威を取り除くために必要とマクマスター氏が考えたことのようだ。

しかしながら、こうした辞任や解雇よりも不安にさせるのは、何十年にもわたり、幾度となく戦地に赴き手柄を立て、国に尽くしてきた陸軍中将のマクマスター氏に対する中傷キャンペーンである。

わずかこの数日内のことだが、ホワイトハウス内の国家主義的な勢力と関わりがあるとみられる元政府職員がメディアに対し、マクマスター氏のあらぬうわさを持ちかけ、大統領との関係における同氏の信用性を損なおうとした。

ある当局者は匿名でデイリー・コーラー紙に対し、「大統領がしたいこと全てにマクマスター氏は反対する」と話している。また、エルサレム・ポスト紙のキャロリーン・グリック記者は自身のフェイスブックに、名前を明かさない複数の高官が、マクマスター氏のイスラエルに対する支持は不十分だと考えていると、個人的に投稿している。ツイッター上では、「#FireMcMaster(マクマスターをクビにしろ)」のようなハシュタグがあふれている。

NSC内部のいさかいは、言うまでもなく、前例がないわけではない。他の機関と同じく、NSCメンバーも、生死の決断が下される非常にストレスのたまる環境で働くなど、さまざまな理由から互いに神経を逆なですることはある。オバマ政権時、閣僚と政府高官たちは、アフガニスタン政策と同国への大規模な兵士の追加派遣を巡って激しく戦った。

ジョージ・W・ブッシュ政権の1期目では、ラムズフェルド国防長官とチェイニー副大統領が、パウエル国務長官とライス大統領補佐官(国家安全保障担当)とやり合ったことは今や伝説となっている。4人ともブッシュ大統領のNSC主要メンバーであり、国家安全保障政策を決定するうえで欠かせない利害関係者である。

レーガン政権のワインバーガー国防長官とシュルツ国務長官も意見が合うことはまれで、ニューヨーク・タイムズ・マガジンが2人の争いを特集したほどだ。

しかし、こうした過去の例と現在の違いは、他の政権には比較的秩序だった、国家安全保障の意思決定プロセスが存在したことだ。白熱した議論や反目の後には、最終的に決定が下されていた。

一方、トランプ政権は、国務省の人員不足にいまだ足をとられている。解消されなければ、NSCへの国務省の影響力が弱まることになる。トランプ政権発足からの半年間を支配している悪意ある当てこすりやメディアへの中傷的なリーク、匿名での不満の暴露は、政府当局者のエゴが、大統領に正しい提案を行うという何よりも重要な仕事より優先されてしまっていることの表れといえる。

政権内部に団結心を植え付けようとするケリー新大統領首席補佐官の作戦の成否は、トランプ大統領がそれを支持するかどうかに大いに依存するだろう。否定的なメディア報道を嫌悪するトランプ氏のことだ、ホワイトハウスの内紛を断固取り締まることは歓迎するだろう。さもなくば、政権内部の混乱と陰謀を中心とするメディア報道が今後も続くことになる。

NSCと政権の両方にいるマクマスター氏の国家主義的なライバルと同氏は、個人攻撃に訴えることなく政策課題で広く意見を戦わせることが可能だ。個人攻撃は、すでにストレスの多い環境にさらなるストレスをもたらすだけである。米国を守り、健全で実用的かつ賢明な外交政策を立案することは、不必要な重荷を回避する必要がない場合においても、困難な仕事である。

*筆者は米ディフェンス・プライオリティーズのフェロー。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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