Amir Handjani

[14日 ロイター] - 中東に平和と安定をもたらそうというトランプ米大統領の試みは、裏目に出た。大統領は、主要同盟国の1つであるカタールを地政学的な危機に陥れ、地域の緊張緩和に向けた自身の政権による努力を台無しにした。

トランプ大統領が最近行った中東訪問の目的は、同じような考えを持つアラブ諸国とイスラエルを集結し、イランに対抗させることにあった。だが代わりに、長年の米同盟国のあいだに分裂を生んでしまった。

トランプ氏が中東を離れるとすぐに、サウジアラビアやエジプト、アラブ首長国連合(UAE)が主導するアラブ諸国が、中東における米軍活動の要であるカタールとの国交を断絶した。カタールとの繋がりを絶つ理由の1つは、同国が、イランを周辺国から孤立化させる必要があるという主張を受け入れなかったことにある。

カタールには、イランに対してより現実的な対応をとるべき理由がある。カタールの富の源は、ペルシャ湾を挟んで北に位置するイランと共有するガス田にある。ノースドーム・ガス田(イラン側ではサウスパルス・ガス田)は、世界最大の埋蔵量を誇るガス田だ。周辺国には、これほど経済的な繁栄がイランとの関係に依拠している国はない。

トランプ大統領は、イランとアラブ諸国のあいだに立場の違いに対処する外交的余地を残さないことで、サウジ王家とともに、米国をイランのシーア派政権との衝突軌道に乗せてしまった。

これは、オバマ前政権が、イランと核合意を結び、湾岸地域における米軍のプレゼンスを軽減することで、(成功しなかったが)その実現を回避しようと努めたことだった。

オマーンやクウェートなどのアラブ諸国もイラン政府と現実的な関係を築いており、オバマ大統領がイランとの核協議を始めるにあたってオマーン国王の助言を得たことが示すように、米政権にとってもその関係は利用価値があることを、トランプ氏は理解していないようだ。

トランプ氏の「新たな」アプローチは、古い考えの焼き直しだ。イランを非難し孤立化させることで、米国の同盟国に平和と安全をもたらすことができるというものだ。

しかしトランプ政権は、最も偏狭な形態のスンニ派イスラム教を世界に輸出しているサウジアラビアに、武器供与を拡大すると約束した。国教である厳格なワッハーブ派をサウジ政府が推奨したことが、イスラム国(IS)やアルカイダなどの過激派組織に思想的な基盤を与えたのだ。

最近のテヘランにおけるISの攻撃は、イランもまた、パリやマンチェスター、ロンドンなどの欧州都市を襲った暴力の標的になることを示した。だがトランプ氏は、様々な思惑が渦巻く中東政策を決めるにあたって歴代米大統領が苦心してきた、ニュアンスや微妙さには無関心なようだ。

米政権がより高性能の兵器を投入しても、イラン政府が委縮することはない。逆にイラン政府は、米同盟国の数分の1規模の国防費を維持したまま、弾道ミサイル開発を加速させるだろう。また、ロシアと中国がイランに武器を売却する機会を与え、地域の軍拡競争が過熱する可能性もある。

さらに、イランの勢力は国境を越え、シリアやイラク、レバノンに及んでいる。イラン軍は、訓練も実戦経験も豊富だ。一方のサウジアラビアは、イエメンの「フーシ派」に対する空爆が2年目に入っても制圧できないでいる。IS戦闘員の出身国の上位5カ国のうち4カ国までが、スンニ派が多数を占める、中東における米国の軍事友好国であることは、偶然ではない。トランプ大統領は、イスラム圏6カ国の出身者の入国を中止する大統領令の立案にあたり、それを忘れていたようだ。

トランプ大統領が、サウジアラビアの言い分を丸飲みすることは、シーア派が主導権を握るイラクにおける米軍の軍事行動にもひどい結果をもたらす。イランの支援を受けた武装勢力が、イラクでISと戦っていることは、公然の事実だ。イランが、イラク政府に強い影響力を持つことも、秘密ではない。トランプ氏の好戦的な発言で、こうした繊細な連携が壊れ、他の中東地域でさらにシーア派を孤立化させることにつながりかねない。

トランプ大統領にとって皮肉なことに、地域を飲み込んだ宗派抗争に対する包括的な解決策を見つけるには、イランとアラブ諸国の協力関係が必須だ。米政府は、軍事衝突なしに、イラン政府に言うことを聞かせることはできない。

トランプ大統領は、アラブの友好国に平和と安全をもたらし、アラブとイスラエルの対立に終止符を打つと約束した。イランと敵対し、地域諸国がお互いを孤立化させるように促すことは、さらに大きな混乱を招くだけで、解決にはつながらない。

*筆者は米シンクタンク、アトランティック・カウンシルのシニア・フェロー並びに、トルーマン・ナショナル・セキュリティ・プロジェクトのフェローを務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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