[3日 ロイター] - ミケランジェロは1517年、トスカーナ州のアルティッシモ山に登り、そこで夢の大理石を発見した。

ルネサンスの巨匠はこの大理石について、「粒子が細かく、均質で、クリスタルのように透明感があり、砂糖を思わせる」と絶賛した。ミケランジェロは、近くにあるカッラーラ産の大理石でいくつかの有名な作品を作っていたが、この大理石はそれよりも上質かもしれないと考えた。

アルティッシモ山の大理石 (2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)

アルティッシモ山の大理石 (2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)

ローマ法王レオ10世の祝福を得たミケランジェロは、山から白い大理石を切り出し、フィレンツェに運ぶための道を設計した。フィレンツェのサン・ロレンツォ聖堂のファサードに使おうというのだ。

採石作業を軌道に乗せる見返りとして、フィレンツェの当局は、一生好きなだけアルティッシモ山の大理石を取る権利をミケランジェロに与えた。アルティッシモはイタリア語で、「至高の」と「神」を意味する。

アルティッシモ山の採石場に続く道(2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)

アルティッシモ山の採石場に続く道(2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)

「最後の審判の日まで採掘し続けられるほど十分な大理石だ」と、ミケランジェロは知人に書き送っている。

しかし、現実はそうならなかった。

古い時代の避難小屋(2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)

古い時代の避難小屋(2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)

採石場への道を作る作業が数年間続けられたのち、フィレンツェのメディチ家出身だったレオ10世は、ミケランジェロへの依頼を取り消し、計画は放棄された。サン・ロレンツォ聖堂は、今日に至るまでファサードの装飾がないままだ。

今日、イタリアの標高1589メートルのアルティッシモ山の採石場では、ミケランジェロの天才をもってしても想像できなかったに違いない採石活動が活発に行われている。

(2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)

(2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)

石を切断して採掘する現代の技術により、逆さまの階段や、角砂糖のような構造が空に向かって伸びているような、まるでキュービズム絵画のようなシュールな光景が広がっている。

「原始的な手法は、人と家畜の働きが全てだった」と、採掘責任者のフランコ・ピエロッティ氏は言う。

「ノミやレバー、ハンマーなどの原始的な道具は、19世紀にヘリカルワイヤを使った切断工具が登場して進化し、今ではダイヤモンドを使ったワイヤーや電動のこぎり、重機などを使っている」という。

切り出した大理石を運ぶブルドーザー(2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)

切り出した大理石を運ぶブルドーザー(2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)

採石が始まる前に、専門の職員がロープで体を支えながら山肌を下り、鉄棒を使ってぐらつく岩を落としていく。採石中にこうした岩が落下して負傷者が出るのを予防するためだ。

ミケランジェロの時代から3世紀の間、アルティッシモの採石場は、発見されては放棄されることを繰り返した。

1821年に、地主のマルコ・ボッリーニがフランス人のジャン・バプティスト・アレクサンドル・オンローと新会社を設立した。この会社は現在もこの地域で活動を続けている。

(2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)

(2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)

新会社は、経済的に困窮していた地域に新たな命を吹き込んだ。数百人の採石職人や、ソリの操作人、牛にひかせる運搬車両の運転手など、たくさんの労働者を雇用した。

19世紀には、ロシア皇帝がサンクトペテルブルクの聖イサアク大聖堂の建設にアルティッシモの大理石を選び、最近では、2007年にオープンしたアブダビのシェイク・ザイード・グランドモスクにも使われた。

アルティッシモ山 (2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)

アルティッシモ山 (2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)

今日では、オンロー社が山の全てを所有し、140人の職員を雇って、5カ所の採石場で大理石を切り出している。

これまで、オーギュスト・ロダンやヘンリー・ムーア、ジョアン・ミロ、イサム・ノグチといった名だたる芸術家が、アルティッシモの大理石を使って彫刻を作成している。

ミケランジェロも、誇りに思うに違いない。

トスカーナ州のオンロー社工房で、大理石を磨く職人 (2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)

トスカーナ州のオンロー社工房で、大理石を磨く職人 (2017年 ロイター/Alessandro Bianchi)

(写真:Alessandro Bianchi 文責:Philip Pullella)