Daniel Leussink

[東京 8日 ロイター] - 世界最大規模を誇る日本のマグロ市場が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)による大打撃にあえいでいる。水産物を扱う広大な豊洲市場の卸売業者らやマグロ料理の飲食店は事業の存続を賭け、待ったなしの対応を迫られている。

緊急事態宣言が5月末に解除され、各企業は経済活動がもっと回復するものと期待していた。だが株主総会や結婚披露宴などの大規模宴会は引き続き見送られており、日本人の多くはまだ外食に腰が引けている。

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<大型イベント自粛で注文激減>

パンデミックによりイベント用の注文が壊滅、鮮魚、特に「寿司ネタの王様」と称されるホンマグロの需要は低迷している。政府統計によれば、7月のマグロの価格は前年同月比で8.4%低下。鮮魚全般の価格が前年比1.5%低下しているのに比べ、はるかに急激な相場下落である。

東京・神田で「鮪のシマハラ」を営む島原慶将氏(47)は、「今月8月は、去年の8月に比べると60%くらいの売り上げダウンになると思う」と話す。

1年前に自分の店を開業した島原氏は、来客数の低下による打撃を相殺するために、7月に箱詰めした冷凍マグロのオンライン販売を開始した。

これまで、赤身2サクが入った1箱5500円の商品に約200件の注文が集まった。9月末には、さらに高価な中トロが入った1箱8500円の商品を販売開始する計画だ。

高齢の家族に送るために購入してくれる顧客もいるものの、それ以外の顧客にとっては、冷蔵庫で数時間放置するという面倒な解凍プロセスが壁になっている。

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世界最大の取引高を持つ豊洲市場で働く、マグロ卸売業者「稲良商店」の天野基三雄氏(46)は、家庭での消費は増えているものの、それ以外で失われた分を取り戻すには十分ではない、と話す。

天野氏によれば、緊急事態宣言の解除以来、同氏が扱う魚に対する飲食店からの需要はやや回復したものの、大型イベントや、東京・銀座などの高級料理店からの引き合いはなかなか戻っていないという。

結婚披露宴や葬儀などの会食の低迷による打撃は深刻だ。本来なら1件でマグロ30~40キロという大口注文が期待できるからだ。寿司屋や居酒屋からの注文は、それぞれ約10キロや6キロといった小規模に留まることが一般的だ。

「4-5月ぐらいはお客さんの9割以上が休んだから、結局僕らも事実上の休止。7月の頭くらいは結構良かったんだけれど、またそこからちょっと失速した」。まるで刀のような大きな包丁を振るって158キロのホンマグロを捌きながら、天野氏は言う。

同氏の店ではもっぱら高品質のマグロを生・冷凍で販売しているが、ここ1ヶ月は、主要ホテルや東京・羽田空港の飲食店からの需要が伸びず、通常に比べて30~40%も取引が減ったと話す。

このところ海外からの注文はやや上向きになっており、特にロシアからの注文はパンデミック前の水準に回復しつつあるという。

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<事業存続を賭けて>

国連食糧農業機関によれば、日本の高級マグロ輸入量は2019年に10%増加し、特にホンマグロは13%伸び約3万9660トンとなった。2020年の東京五輪などの大型イベントに備えた業界の動きが背景にある。五輪はその後延期が決定された。

2018年のマグロ輸入額は世界全体で157億ドル(現在の為替で約1兆6600億円)。最大の輸入国は日本だった。

だがパンデミックは国内市場に大きな打撃を与え、財務省のデータによれば、2020年上半期の日本の輸入額は前年同期に比べ18%減少した。外出や外食の手控えムードが残る中、状況はなかなか好転しそうにない。

東京海洋大学の勝川俊雄准教授によれば、東京の寿司屋は地方から来る人々に人気があるが、そうした訪問客が減少しているという。

同准教授によると、寿司屋関係者からは「東京への旅行が全部キャンセルされて誰も来ない」との声が聞かれるという。

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<お店を応援したい>

生命保険会社勤務の女性は、8月末の平日の夜、娘を連れて神田の「鮪のシマハラ」を訪れた。この店が営業を続けられるように応援したいというの気持ちがあったという。

この女性はふだん家でマグロを食べることはないという。解凍プロセスが面倒だからだ。

コロナ自粛の中でも彼女のようなお客さんにマグロを手軽に食べてもらえないか。「鮪のシマハラ」のオーナー、島原氏はオンラインで販売する商品に、マグロを解凍・調理する最良の方法を説明するパンフレットを添付している。

(翻訳:エァクレーレン)