Swaha Pattanaik

[ロンドン 11日 ロイター BREAKINGVIEWS] - バンク・オブ・アメリカの試算によると、世界中で導入された景気刺激策は年初来の総額が20兆ドル前後に達した。これは昨年の全世界の国内総生産(GDP)の20%余りに相当する。しかし投資家はまったく動揺していない。大量の資金をつぎ込んでもインフレはほんのわずかしか上昇しないようなのだ。

期待インフレ率の目安となるインフレスワップの5年先スタート5年物フォワードレートを見てみよう。ユーロ圏では3月に付けた0.72%という極めて低い水準から75%も上昇している。しかしそれでも1.25%で、1月よりは低く、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が掲げる2%弱の目標を大幅に下回っている。

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バンク・オブ・アメリカの試算によると、米国が実施した金融・財政面の景気刺激策の規模はGDPの30%近くに達している。米国の5年先5年物フォワードレートは3月に付けた1.20%から1.93%に持ち直したが、2019年末までの4年間の大半でこれを上回る水準にあり、米連邦準備理事会(FRB)の目標である2%に届いていない。

ノーベル賞を受賞した経済学者、ミルトン・フリードマン氏のインフレについての考え方がほぼ正しかったのならば、マーケットは極めてひどい状態になっている。フリードマン氏は通貨供給量が増えれば増えるほど、インフレはますます上昇すると確信していた。フリードマン氏らマネタリストは、流通している現金通貨に預金を加えたM2通貨供給量を極めて重視する。6月のM2の伸び率はユーロ圏では年率9.2%に加速して2008年以来の高い伸びを示し、米国では23%と驚嘆すべき水準に達した。

もちろんフリードマン氏が完全に間違っているのだろう。どれほど大量の通貨が供給されようとも、人々や企業がお金を使わなければ、インフレは絶対に上昇しない。今は新型コロナウイルスの世界的大流行で投資や生産が落ち込み、消費者や企業の景況感も悪化している。

インフレが上がらないのは通貨のせいだけではない。先進国では失業率が何年間も低下したが、賃金の伸びは高まらなかった。日本やユーロ圏では何年にもわたり金融刺激策が導入されたが、取るに足らないほどの効果しか上がっていない。

しかし今回は別なのかもしれない。金融市場はひどい間違いを犯すことが少なくない。ただ、足元のインフレ関連の市場はかなり良く知られた事柄を反映しているようだ。インフレを引き起こす要因が最近、不可思議な様相を帯びているということを。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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